システムの保守費・運用コストを約3分の1に削減したケースも|作り直さずに始める「AIネイティブ運用」
「保守費は毎年払っているけれど、何にいくらかかっているのかよく分からない」「ちょっとした修正にも見積もりと費用が発生する」。
業務システムの保守費・運用コストについて、こうした悩みを抱えている企業は少なくありません。とはいえ、「システムを作り直すほどの予算も時間もない」「今の外注先に頼るしかない」と、そのまま払い続けているケースも多いのではないでしょうか。
保守費が高くなる原因は、システムそのものよりも、保守・改修の進め方にあることが少なくありません。そして、その進め方はAIの登場によって大きく変えられるようになりました。
私たちワンエイティでは、AIを前提に保守・改修のプロセスを組み直す「AIネイティブ運用」に取り組んでいます。実際に、開発・運用体制を見直したことで運用コストを従来の約3分の1まで削減できたケースもあります。
本記事では、システムの保守費が膨らむ理由と、AIネイティブ運用に切り替えることでコストが下がる仕組み、切り替えの進め方を解説します。
システムの保守費・運用コストが高くなる5つの理由
次のうち、ひとつでも当てはまるものはありませんか?
- 「ここを直したい」と思うたびに、見積もりと費用が発生している
- 小さな修正でも、実際に直るまでに数週間かかる
- 保守費の内訳を聞かれても、社内で説明できる人がいない
- 「作った会社でないと触れない」と言われている
- システムで足りない部分を、Excelや手作業の転記で補っている
当てはまる項目があれば、保守費は次のような理由で膨らんでいる可能性があります。
1. 小さな改修でも「調査・見積もり・発注」が必要になる
システムの改修では、コードを書く時間だけがコストではありません。「この変更は可能か」「どこに影響するか」「何時間かかるか」を調べ、見積もりを出し、社内で承認し、発注する。実装そのものは数時間でも、その前後に数日から数週間かかり、そのたびに費用が発生します。
- 要望の伝達
- 仕様確認
- 調査
- 見積もり
- 発注
- 開発
- レビュー
- 修正
- リリース
2. 外注先にしか分からない状態になっている
システムを作った会社に保守を任せ続けると、仕様や構成を把握しているのはその会社だけ、という状態になりがちです。そうなると、文言をひとつ変える、項目をひとつ足すといった小さな修正でも、直すたびに必ず外注先への費用が発生します。
外注そのものが悪いわけではありません。しかし「この会社に頼まなければ何も変えられない」状態では、費用や納期を比較・交渉する余地がなく、言われた見積もりをそのまま受け入れるしかなくなります。
3. 属人化で、調査そのものに時間がかかる
改修を重ねたシステムほど、仕様書と実際の動きがずれていきます。「○○さんしか分からない」部分が増えると、担当者が変わるたびにコードを読み直す必要があり、調査費用がかさみます。
4. システムの不足を、人の手作業で補っている
システムで対応できない部分を、CSVの加工や別システムへの転記、Excelでの管理といった手作業で補っていることがあります。こうした作業の人件費や、人的ミスへの対応も、目に見えにくい運用コストです。
5. 使われていないものにも払い続けている
使われなくなった機能、旧環境のサーバー、不要になったライセンスやクラウドの設定。誰も全体を把握していないと、こうしたものが残ったまま課金され続けることがあります。実際に私たちも、外注先が構築したクラウド環境を見直した際、すでに使われていない旧環境のサーバーなどが毎月課金され続けていたことがありました。
AIネイティブ運用とは:作り直さずに「進め方」を変える
AIネイティブ運用とは、AIを補助ツールとして部分的に使うのではなく、AIの活用を前提に、保守・改修のプロセス全体を組み直すことです。
現在のAIは、コードを書くだけでなく、既存コードの解析、影響範囲の調査、ドキュメント作成、テスト、コードレビューまで担えるようになりました。これまで人が時間をかけて行っていた「調べる」「確認する」工程の多くを、AIと分担できます。
- 要望の整理
- AIによる調査・実装
- 別のAIによるレビュー
- 人による最終判断
- テスト・リリース
私たちはこれを、「AIループプログラミング」という手法で実践しています。人が「何を、なぜ作るのか」を描き、AIが設計・実装・検証のループを繰り返し回し続ける方法です。AIに任せられる工程はAIへ、人は企画と判断に集中する。AIは人が休んでいる間も実装と検証を進められるため、これまで数日〜数週間待っていた改修を短期間で進められます。
ポイントは、システムを作り直さなくても始められることです。今のシステムのまま、保守・改修の進め方を切り替えるだけでも、コストの構造は変わります。
運用コストを約3分の1に削減したケースも。コストが下がる理由
削減につながったのは、開発費を値引きしたからではありません。システムの維持に付随していた次のようなコストを、開発・運用の仕組みごと見直したためです。
| 項目 | 従来 | AIネイティブ運用 |
|---|---|---|
| 改修の依頼 | 外部エンジニアへ依頼し、調査・見積もり・発注を経て着手 | 要望を整理してAIで実装し、AIと人がレビュー |
| 改修のリードタイム | 小さな修正でも数日〜数週間 | 内容によっては即日で実装・検証まで完了 |
| 仕様の把握 | 特定の担当者・開発会社に依存 | AIでコード解析・ドキュメントを整備し、誰でも追える状態に |
| 周辺業務 | CSV加工や転記などの手作業が残る | 手作業そのものを減らす仕組みに |
※削減幅はシステムの規模や業務内容によって異なります。ご相談時に現状をお伺いし、どこにコストがかかっているかを整理したうえで見通しをお伝えします。
調査・見積もりの待ち時間が短くなる
AIを前提とした体制なら、システムと業務を理解した担当者が要望の意図を整理し、AIと対話しながら仕様を具体化して実装へ進められます。私たちの現場でも、外部への依頼であれば数日以上を想定していた内容が、レビューまで含めて即日完了することがあります。
改修のたびに発生していた調査・見積もりのコストと待ち時間が減ることで、システムは「数年に一度大きく改修するもの」から「業務に合わせて継続的に改善するもの」へと変わります。
外注依存と属人化から抜け出せる
実装・調査・レビューの工数が減れば、外部に依頼していた作業の一部を内製化できます。また、AIでコード解析やドキュメント整備を行うことで、「○○さんしか分からない」状態も解消しやすくなります。仕様をAIも人間も理解しやすい状態で維持しておけば、担当者が変わっても調査からやり直す必要がありません。
私たちは、改修を代わりに請け負うだけでなく、AIを前提とした保守体制を社内につくる内製化の支援にも対応しています。外部に頼る部分と社内で担う部分を整理し、自社でシステムを育てていける状態を目指します。
人の手作業を減らし、人的ミスを抑えられる
毎日のコピー&ペーストや照合作業を「気をつける」「ダブルチェックする」でカバーし続けるのではなく、そもそも人が作業しなくていい仕組みに変える。改修のハードルが下がることで、これまで後回しにしていた業務の自動化にも手をつけやすくなります。
使われていないものを棚卸しできる
AIを使えば、システムの構成や設定を短期間で洗い出せます。使われていない機能やサーバー、不要な設定を整理することで、「何に払っているか分からない」費用を減らせます。浮いた費用の一部をセキュリティ対策に回すなど、コストの配分そのものを見直すこともできます。
コストを下げても、品質は落とさない
「AIに任せて安くなっても、品質が下がるのでは」と心配される方もいるかもしれません。
私たちは、AIが生成したコードをそのまま本番環境に反映することはしません。AIも人間と同じように間違えることを前提に、あるAIモデルで実装したコードを別のAIモデルがレビューし、最後に人が要所を判断する、という多重チェックの体制をとっています。網羅的なチェックはAIが担い、人は業務への影響が大きい箇所に集中するため、チェックを増やしながらスピードも維持できます。
実際、外部エンジニアが開発した既存システムをAIでレビューしたところ、バグやセキュリティ上確認すべき箇所が見つかることもありました。AIネイティブ運用は、コストを下げるだけでなく、見落とされていた問題に気づく機会にもなります。
AIを使った開発の品質管理について詳しくは、レガシーシステムをAIで刷新|業務を止めずに新システムへ載せ替える「AIネイティブ開発」とはもあわせてご覧ください。
AIネイティブ運用への切り替えの進め方
AIネイティブ運用は、一度にすべてを切り替える必要はありません。私たちは、次のような流れで段階的に進めます。
- 現状のコストと業務の棚卸し
保守費・外注費の内訳、改修にかかっている時間、システムの不足を補っている手作業などを洗い出し、どこにコストがかかっているかを整理します。 - AIによるシステムの解析・ドキュメント化
AIで既存コードや構成を解析し、機能・データ構造・処理の流れを文書化します。仕様書が残っていない場合も、ここから「誰でも追える状態」をつくります。 - 保守・改修フローの切り替え
要望の受付から実装、レビュー、リリースまでを、AIを前提としたフローに切り替えます。まずは影響の小さい改修から始め、運用に慣れながら範囲を広げます。 - 不要なもの・手作業の整理
使われていない機能やリソースを整理し、手作業で補っていた業務の自動化を進めます。 - 必要に応じてシステムの刷新を検討
運用を続けるなかで、既存システムの構造そのものが改善の足かせになっていると分かった場合は、新システムへの載せ替えも選択肢になります。
新システムへの載せ替えについては、レガシーシステムをAIで刷新|業務を止めずに新システムへ載せ替える「AIネイティブ開発」とはで詳しく解説しています。
AIネイティブ運用に切り替える際の注意点
すべてのコストが下がるわけではない
無駄を整理する一方で、セキュリティ対策や安定運用のために費用を追加したほうがよい部分が見つかることもあります。大切なのは、やみくもに削ることではなく、何にお金をかけるべきかを見直すことです。
要望を整理し、言語化できる人が必要
AIのコーディング能力が上がるほど、「何を作らせるか」を判断する人の役割は大きくなります。「相手は何に困っているのか」「システムとしてどう解決すべきか」を理解し、言語化できる人がいてこそ、AIネイティブ運用は機能します。
ただ、業務とシステムの両方を理解し、AIへの指示まで落とし込める人材を社内ですぐに確保するのは簡単ではありません。そこでおすすめしたいのが、業務を理解したパートナーと組んで始めることです。要望の整理からAIによる実装・運用までをパートナーと一緒に進めながら、そのノウハウを少しずつ社内に移していけば、無理なく内製化へつなげられます。
セキュリティ・個人情報の取り扱いを決めておく
AIを利用する以上、どの情報をどのAIへ渡すのか、利用するサービスのデータ取り扱いはどうなっているのかを確認する必要があります。私たちは、プロジェクトごとにAIへ渡してよい情報の範囲を決め、利用するサービスのデータ取り扱い条件を確認したうえでAIを活用しています。
よくある質問
今のシステムを作り直さなくても、AIネイティブ運用に切り替えられますか?
はい。AIネイティブ運用は、システムそのものではなく保守・改修の進め方を変える取り組みです。既存システムのまま、解析・ドキュメント整備・改修フローの見直しから始められます。
どのくらいコストが下がりますか?
システムの規模や、どこにコストがかかっているかによって異なります。運用コストを約3分の1まで削減できたケースもありますが、まずは現状のコストと業務を整理したうえで見通しをお伝えします。
今の外注先との関係はどうなりますか?
外注をすべてやめる必要はありません。どの作業を内製化し、どの作業を引き続き外部に任せるかを整理し、状況に応じて段階的に切り替えます。
保守費を「払い続けるもの」から「見直せるもの」へ
これまで、システムの保守費は「動かし続けるために必要な固定費」として、見直されることが少ないコストでした。しかしAIの登場によって、保守・改修の進め方そのものを変えられるようになっています。
- 改修のたびに発生していた調査・見積もりの待ち時間を短縮できる
- 外注先や特定の担当者への依存を減らせる
- 手作業や使われていないものへの支出を整理できる
- 業務に合わせて、継続的にシステムを改善していける
システムを作り直すかどうかを決める前に、まずは「今、何にいくら払っているのか」を整理するところから始めてみてください。
こんな課題があれば、ご相談ください
- 保守費用が年々高くなっている
- 少しの改修にも時間と費用がかかる
- 保守費の内訳がよく分からない
- システムを作った会社や担当者に依存している
- AIを活用して、保守・運用の体制を見直したい
ワンエイティでは、現在の保守費と業務の状況を確認したうえで、AIを活用した運用の見直しから改修・リプレイス、内製化の支援まで、最適な方法をご提案します。企画から開発・運用まで、ひとつのチームで一気通貫で伴走します。
「何から見直せばいいか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。