企業のDX促進を考える│代表コラム
日本におけるDXの定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
マッキンゼーの緊急提言
「DXとは事業変革、ビジネスモデル変革、ビジネスプロセス変革である。よってDXはIT部門主導で実施するものではなく、事業部門が個別に自部門を最適化するために実施するものでもなく、企業戦略の柱としてCEO がリードするものである」
▶マッキンゼーの緊急提言より
(1)現場から見る日本のDX
デジタルツールの導入について、さまざまな相談を受ける機会が、ますます多くなった。
顧客の要望に応じて、最適なツールを選定し、導入する機会も多い。
非対面型のツールやノーコードツールなど多岐に渡るが、多くの場合、SaaSで借りたツールは汎用性が高い分「理想通り」には及ばず、運用でカバーすることが多々ある。
それでも、何もツールを入れていなかった従前より大幅な改善は見られ、多くの顧客が満足する。
しかしながら、経営者が求めるDXのレベルには及ばず、大きな人員削減や売上増加にはつながらない。
日本の事業者は日本のツールを使うことが多いが、ウェブ担当者のスキルも低く、どのツールも同じような機能がついているため、費用感で選定する事も多い。
何しろ使ってみる前からは何が問題になるかがわからないため、入れてみて改善できるところもあれば、できないところもある。
多くのツールが年間契約である事も多く、入れて失敗なら時が経つをの待って解約する、というケースも少なからず目の当たりにしている。
日本企業が海外ツールを使ってみる事もあるが、どうも感覚的に使いにくいという意見が多い。
日本のDXは大幅に遅れており、調査対象64カ国中32位。
G7の中では、6番目となっている。
かつて、世界をリードする開発力を持っていた日本が本当にそうなのか。
2023年時点の国内総生産(GDP)は、ドイツに抜かれ4位に落ちた。
しかし依然4位である。
日本のDXは、現場担当者のリテラシーがついてこないのは事実だが、本質的なものとして少しずつ着実に企業に根付いているようにも思える。
時間を要してはいるが、各企業が圧倒的な成果が出る準備をしているような雰囲気も垣間見える。
レガシーシステムの頭打ちがくると言われている2025年を目前に、少し遅れをとりながらも、各企業が自分たちの事業にあった仕組みづくりを進めている。
▶参考資料:DXレポート 2025年の壁(経済産業省)
(2)デジタル広告からデジタル戦略へ
お金に糸目をつけない大企業はSaaSの導入検討はそこそこに、フルスクラッチ開発が依然として多く、時間もコストもかかっている傾向は強い。
ゼロから開発は当然開発工数も多くなり詳細な要件定義があるにも関わらず、間に合わなかったり、相互の認識違いによるリスクも高かったりする。
実際に納期が1年遅れることや開発側がギブアップするなどの失敗する企業を多々見てきた。
企業CEOがトップダウン式で、DXを進めろ!と号令を掛けても「何をどうやって?」が曖昧でIT部門の「何と無く」でスタートする。
かといって、ボトムアップ型でITリテラシーの低い「日本の民」からいいアイデアが出てくるかと言えば、そんなことはない。
外部のコンサルタントなどを入れる会社は増え、外部パートナーとの連携がよくなっている所もあるが、コンサルタントの言いなりで上手いように「やられちゃっている」企業もたくさんある。
コンサルタントを入れようとも、日本企業のDXは誰にとっても初めてなのだから簡単なことではない。
私たちのバッティングする企業といえば、この10年、電通、博報堂などの大手広告代理店だった。
デジタル企業の買収を繰り返し、さまざまなソリューションを持つデジタル広告会社だ。
CMの費用をYoutubeに付け替え、億単位の費用でECサイトや検索サイトを作る。デジタル広告の魅力は「低コストで、効果が見えるプロモーションの実施で改善ができること」なのに。
事態が変わったのはこの4、5年で、アクセンチュアや、船井総研のような経営コンサル会社が我々の領域に踏み込んでくるケースが多くなった。
業務の基幹となるシステムコンサルティングから入っているような状態からデジタルマーケティング領域に提案を広めているため、全く違う、考え方、切り口で運用広告などの提案をしてくる。
入り込み方が深いぶん、我々にとってはかなりの脅威となり得る。
確かにDXが進むにつれて、デジタルが企業経営の中心であり、経営戦略の核となる。
経営コンサル側から経営戦略の核となるデジタルマーケティングの提案が出てくるのも自然の流れと言える。
これらの流れから、
経営コンサル会社、広告代理店、ウェブ開発会社が一体化していく流れは強まっていくものだと考えられる。
(3)必要とされるモノづくりとアジャイル的な開発
先日、レストラン経営をするIT部門の担当者が、「人を削減すること」にビビっているという話をしていた。
受付の無人化、オンライン決済導入などを進める中で、4、5人不要になるという話だ。
しかもそれらの方々が高齢だから他への配置転換も難しいという。
経営者からは進めるように指示をされて、現場からは泣きが入るという、なんとも苦しい板挟みである。
実際には高齢のスタッフもそこまで長く働く人材ではなく時間の問題ではあるので、弊社からの提案は「徐々に、時間をかけて、順次進めましょう」ということだった。
普通に進めても2〜3年がかりのプロジェクトのため、進めるうちに他のポジションができることもあるし、自然に退職することもあると思うので、順次進めていくという、こちらも苦しい提案ではある。
2030年には、労働人口が600万人以上不足するというから、経営者としては待ったなしだ。
労働人口の平均年齢は、2024年現在では40歳前後のようだ。
団塊の世代、ゆとり世代、Z世代が入り混じる社会で、決裁者が団塊の世代ではITリテラシーを求めることは難しい。
コンサルティングや、広告会社、ウェブ会社もレッドオーシャンの中で、本物も偽物も見分けがつかないため、我々世代の経験の豊富な人材が企業と一緒になってわかるまで話し合いながら適切なDXを推し進め、来たる時代に備えたデジタル基盤をつくらないければいけない。
これまで通常であった、「ウォーターフォール的な、全てが整ってからリリースする」ではスピードが上がらない。
機能ひとつひとつの要件を詰め、できたものからリリースしていくアジャイル発想で、柔軟かつスピーディーな対応が求められる。
絵のない要件定義書を見て、システム全体をイメージできるほど誰もが賢かったことは未だかつてない。まずは、絵を作って、絵では表現のできないところを要件定義書としてまとめればいい。
絵があれば、リテラシーが低くても、「それがどうなるか」はイメージがつくし、認識齟齬も生まれない。
「言った、言わない」「要件にある、ない」システム屋さんとの「認識齟齬」はうんざりなのです。
(4)柔軟な開発の実現
言うまでもなく、全てのウェブシステムはデータベースで作られている。
データベースはエンジニアがSQL構文を作り組み上げていくもので、当然勉強が必要なのだが、弊社の提供する「デジタライズ」はデータベースをノーコードで構築するサービスだ。
逆にいえば「データベースしか作れない」サービスなので、それだけでは十分に機能しない。データベースを作った後に、そのデータをどのように加工し、抽出し、活用するのか、企画が必要になる。
導入事例のあるクライアントの要望は以下のようなものだ。
CMSを探している。
顧客管理をしたい。
CRMをしたい。
MAツールとして使いたい。
いずれの要望も、デジタライズを活用したデータの整理からはじまる。
しかしながら、デジタライズはその先で本領を発揮する。「どんなことをしたいのか?」への対応力が「無限である」ためだ。
私たちはこれを「ハーフスクラッチでの開発」と呼んでいるのだが、このように説明すると「なんでも出来る」は「なんでも出来ない」なんだよとお叱りを受けることが多々ある。
一般的なメリット、デメリットは以下の通り。
ハーフスクラッチを「他社で作ったプログラムを転用する」という意味合いでサービス化しているシステム開発会社もあるが、デジタライズはAPI技術を活用し、効率的な開発を実現するというもので、新しい概念でもある。
開発の中心にデジタライズというデータベース基盤を配置し、さまざまなツールやウェブサイトにAPIで繋ぐということだ。
APIにより、デジタライズで以下のようなことが簡単に実現する。
・ウェブサイトを更新する。
・ウェブサイトに会員ログイン機能をつける。
・顧客に対してメールやSMSを送る。
・基幹システムとデータを繋ぐ。
・顧客を管理する画面を作成する。
・社内共有プラットフォームを作成する
などなど。
怒られるかもしれまないが、まさに「API技術でなんでも出来る」システムであると考えている。
日本の置かれている背景からも、このサービスは、本質的であり、強い基盤を作るサービスになってきたと確信している。
私が20年前にインターネットマーケティングに興味を持ったのは、「コストをかけずに集客ができるから」、これに尽きる。
時代は変わり、当時に比べれば大きなコストがかかるものになったものの、本質にはその要素があると思っている。デジタライズというサービスは、その「インターネットマーケティングの本質」を捉えながらも、デジタル領域のものづくりを変革するものだと感じる。
経営者とIT部門、コンサル会社や広告会社、開発会社の意識を合わせ、寄り添い合いながら本質的、効率的、スピーディーにデジタル領域を進めていくことで、「日本のDXは優れている」と思わせる日は近いのではないかと思い馳せている現場感なのでした。